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安曇野便り、冬から春へ

川村正春

 「あずみの」この響きだけで旅のロマンを感じさせます。どこまでも続く緑の田園地帯、遠景に広がる雪を抱いた山々。目を閉じると、そんな光景が浮かび、新日本紀行のオープニングメロディが聞こえるようです。憧れの田舎暮らしは、そんな記憶を実現するものでしょう。私達は、2月から5月まで、北アルプス山麓を訪れ、雪国の厳しい寒さと雪が緩み木々が芽吹く季節を体験してきました。

「シニアに嬉しいスキー場」

 冬の活気は何と言ってもスキー場が中心です。バブル時期の大混雑も、今は昔の平静さを取戻しています。若者が減少した代わりに、昔ならした中高年世代が大活躍。華麗なテクニックでゲレンデを舞います。私達は白馬47スキー場のシニアクラブに入りました。会員は47歳以上なら誰でも無料で入会できます。新入会の人にも、クラブハウスに集まった常連さんが気さくに声をかけ、楽しい会話が弾みます。軽食堂に料理を注文することも、お弁当を持ち込むことも出来ます。周りの人からのお裾分けでお腹一杯。一人で来ても、ここで知り合った人と一緒に滑る。みんな楽しむ為にここに来ています。写真は名誉会員の三浦雄一郎さんと、クラブハウスにて。

三浦雄一郎さんと

「山野草の楽しみ」

 雪どけが始まるのを待っていたかのように、植物の芽が顔を出します。蕗のとうの元気な緑の帽子がお互いに挨拶を交わしています。タラの芽、モミジガサ、コゴミ、美味しそうなものが目の前に一杯。水芭蕉もザゼンソウも自慢げに起立の姿勢。落倉湿原、姫川源流、親見(およみ)湿原、居谷里(いやり)湿原、北アルプス山麓は、高山植物の宝庫です。厳しい自然の中で、遥かなる昔から進化を続けて、春が来るたびに命の産声をあげる植物達。人々はその姿を見て、厳しかった冬の寒さから、明るさと活気を貰います。植物を知ること。山々を知ること。歴史を知ること。山麓を歩く楽しみが、何倍にも感じます。写真は、大輪のシラネアオイの花にとまるルリクビボソハムシ。五竜カタクリ園にて撮影しました。

シラネアオイ

「安曇野を感じる」

 安曇野というと、美術館やおしゃれなカフェ、田舎風の蕎麦処というイメージがあります。でも、私は安曇野の自然が何より好きです。安曇野は、大きな川が合流して犀川の流れになる場所。地球の長い歴史の中で、水の流れが山を削り、見事な台地を作り上げました。そこに人々が田畑を作り、人間の営みを始めました。緑一杯の広大な田園地帯、いたる所に聞こえる爽やかな水音、透き通った空間の向うには常念岳の雪山。こんな安曇野を感じる光景が大好きです。写真は、安曇野やまびこ自転車道。安曇野の真中を走る拾ヶ堰用水路に沿って造られたサイクリング専用道路です。対向する自転車の人と笑顔で挨拶を交わす。安曇野を感じる素敵な体験です。

サイクリング

「美味しい魚を味わう」

 釣堀と言うには 勿体無い釣堀、ウィンドマウンテン。二つの川から、北アルプスの雪どけ水を取り入れた池は、温泉で言えば、100%掛け流しの新鮮な水。だから魚が元気で活発に動きます。池には、イワナとヤマメが2000匹。これで釣れないはずがない。でも、彼らは餌取りが上手なので、そんなに簡単ではありません。釣った魚は、その場で炭火焼します。生まれて初めてこんな美味しい川魚を食べました。ここは、本業が森の果樹園という林檎栽培をしているので、帰りには、林檎のプレゼントがあります。釣りが下手でも美味しい魚を味わい、たくさんの林檎のお持ち帰り。安曇野を愛するオーナーのこだわりと暖かい気持ちが感じられる場所です。

釣り堀

「夫婦岩の伝説」

 ウィンドマウンテンの向かいに夫婦岩という大きな二つの岩があります。石版にはこう書いてあります。「山にあった二つの大岩が中房川の流れによって、別れ別れになったが、長い年月の末、この地で再び出会うことができた。この岩を別名『めぐり愛の岩』と言われる所以である。月がこの岩の上空に掛かるとき、二人が愛を誓うなら、その愛は永遠に保たれる。遠く離れ離れになっても、いつか必ず巡り合うことが出来る。」と。
 この岩に毎月のように、お参りする老婦人がいたと言う。ある日、向かいの林檎園のオーナーが尋ねてみると、「自分の夫は、戦争でお国のためにその命を捧げました。一緒にいた時間は短かったけれど、幸せの日々でした。いつの世か、またあの人とめぐり合えるように、この『めぐり愛の岩』にお願いしています」と。その老婦人は、その後しばらく通っていたが、いつの日か、姿を現さなくなったとのこと。 林檎園のオーナーは言います。「きっと、あの人は、新しい美しい世界で、その男性とめぐり合えたからこそ、ここには来なくなったのだと。」
 安曇野の春は、爽やかな光景と美しい伝説で、私の心を癒してくれました。土地の人々との出会いも、楽しい思い出を残してくれました。北アルプス山麓は、もう自分の故郷のように懐かしく感じられます。

夫婦岩



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著者近影 川村 正春
57歳。2年前に早期退職しました。リタイア生活を楽しむ事って何だろうという疑問から色々なことをしています。今年のテーマは長期滞在をすること。今まで知らなかった世界を勉強しています。 自分のHPを持っています。


このコーナーでは、あなたの国内旅行の体験記を募集しています。



情報更新:2007/11/04

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