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古代史ロマン

三田 誠広

 神話や古代史が物語る真理や教え。謎めいているがゆえに、広がるロマン。遥か古の伝説を知ることは、たとえば旅に楽しみを添えることであり、充実した人生を生きることである。

神と密接につながった日本

 日本の歴史は神話から始まる。人間の歴史と神話とがこれほど密接に結びついた国は類例がないだろう。神話の魅力は生々しい人間性にある。兄(あるいは姉) 画像 と弟の対立がそのまま政治的なドラマになったりもする。スサノオ、オオクニヌシ、ヤマサチヒコ、仁徳天皇から歴史の領域の天武天皇まで、虐げられた弟がヒーローとなる物語が綿々と続くのは、古代の人々が一発逆転の政権交代に期待をかけた結果だろう。人間くさい家族の葛藤が、直接に政権交代に結びつくところが古代史の面白さだ。これはシェークスピアの「ハムレット」などにも通じるところだが、日本の古代史は神々の世界とじかに接している。神話の時代から離れた聖徳太子や天智天皇の場合でも、叔母(推古天皇/聖徳太子の叔母)や母(斉明天皇/天智天皇の母)を女帝として擁立しなければ政権を掌握することができなかった。この時代の女帝は神に仕える巫女という側面をもっている。歴史の時代になっても、政治と神とは密接につながっていたのだ。

旅を意義深いものにする神話・古代史の知識

 自分の生まれた国に豊かな歴史があるというのは素晴らしいことだ。旅行に出かけて神社や仏閣や遺跡に接すると、その長大な歴史を偲ぶことができる。自分が踏みしめているその土地を古代の英雄たちが通り過ぎたのだと感慨に耽ることもある。奈艮や難波だけでなく、日向にも筑紫にも古代のロマンがある。残念ながら関東の場合は、古代史の痕跡は少ないのだが、それでも鹿島神宮というすごいものがある。日向を出発して日出ずる処(日本)を求めた古代の人々が、瀬戸内海の先の生駒山のふもとにある草香(「日下」という文字をあてることもある)から、さらに山を越えた大和の地を首都に定め、そこから改めて日出ずる処を求めて皇女を伊勢に派遣し、最後 なかとみのおおかしまに中臣大鹿島の命によって遠い東国の陸の果てまで辿り着いた地点が鹿島神宮だった。
 定年後のんびりと旅行をしたいと考える人は少なくないだろうが、ただ温泉に入って郷土料理を食べるだけでは充実した旅行とはいえない。神話や古代史の知識があれば、遺跡を訪ねる楽しみが加わる。ただ風景を眺めるだけでもいい。山にも川にも神話があるのだし、古代の人々が適った街道があるはずだ。温泉へ行くのもいいが、聖徳太子が四天王に祈った生駒山のふもとや、大化改新と呼ばれるクーデターが起こった明日香の地など、目的を定めて旅行すると、改めて日本という国の素晴らしさに気づくことになる。狭い国土なのに、こんなに豊かな歴史がある。そう思って眺めれば、緑に包まれた山々のたたずまいまでが、いとおしく感じられることだろう。


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三田誠広(みたまさひろ)
1948年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。77年、『僕って何』で芥川賞受賞。早稲田大学文学部客員教授。日本文筆家協会副理事長。日本文肇著作権センター理事長。著作権情報センター理事。日本点字図書館理事。著書に『天翔ける女帝孝謙天皇』『炎の女帝持統天皇』など。

商品番号026 358
価 格¥2,310(税込)
タイトル「古事記」「日本書紀」が描く神話の世界
講 師上田正昭

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情報更新:2007/10/31

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